トーマの休日 ~Toman Holiday~

映画&音楽を中心に

「ラストロマンス」リリース前に振り返る、東京女子流とブラックミュージックの話 ~Paint in Black Music~

 

バレンタインを過ぎたら、もうすぐ春。春の色は青。

 

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(やっとYouTubeで公開された…歌詞が先行公開されて歌詞サイトで1位とは。やっぱり注目されているのが分かる。初めて聴いた瞬間、「おお!」と思わず驚いた。なぜなら曲調が賛否両論あるEDM路線から、黒人音楽オマージュあるいはシティポップ寄りになった(戻った)からだ。歌詞も新鮮で素敵だ。今までに以上に鮮烈で"どうしようもないよね"。) 

 

 

 

 

 

バナナゼロミュージックや関ジャムの音楽テレビ番組の影響もあってか、先行して作品解説する動きが目立つ。リリース前に歌詞や曲についての作り方や意味や隠された意図を、自ら解説してくれる風潮があるような気がする。星野源Rhymesterなどなど然り。

それは私も含め音楽ファンにとっては贅沢なお話が聞けるということでありがたいし、宣伝効果になるのだろう。だが、果たしてこういう裏方の話を"先行"して発表していいのだろうか。甚だ疑問である。

リスナーの受け取り方次第で作品の感じ方は多種多様だ。しかし、初めに説明されたら一通りの解釈に収まってしまうのではないだろうか。また例えるなら、映画本編を観ていないのに予告編の時点で撮影裏の話まで言ってしまうようなことだと考えている。オチ程の重要なことではないが、そういうことは後でディスクに追加収録すればいいじゃないか。運営側が積極的に表に示さなくても歌の良さが伝わると思うのに。

 

そんな動きの中、女子流ちゃんも例外ではない。

 

 

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 (春ねむりさんは恐らくアルバム「約束」を聴き込んだのかな。)

 

 

女子流ちゃんにとって、シングル発売で特設ページが開設されたのは今回が初めてじゃないだろうか。運営側も彼女たちにとっても、かなり特別な歌のようだ。上記の記事も読んでみてMVも観ているが、私は初めて武道館公演を達成する頃の、あの暗くてミステリアスな女子流、を思い出した。

 

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(インタビュー記事で、彼女たちも認めている通りラストロマンスのイメージはこの時期の女子流。これを観た私のファーストインプレッションは「何か暗そうだなぁ…」だった。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クール」、「ダーク」、そして「ミステリアス」

 

当時彼女らの年齢は公表されず(公式に発表されたのは初武道館ライブ時)、鼓動の秘密~Limited Addiction~Bad Flower等々のMVが持つ女性グループにしては暗く重い質感、松井寛氏による大人ディスコティーク・サウンド…どこを取っても他のアイドルグループとは一線を画していた。

そう感じるのは、彼女らが自分たちのことを"アイドルグループ"とは言わずに「ダンス&ボーカルグループ」だといつも呼んでいたからだ。それに加え同時代のももクロエビ中、でんぱといったアイドル乱立時代の代表選手と比べてみても、アイドル特有の元気一杯な感じがなかった。MVを観ても分かる通り、「クール」という言葉がよく似合う。

 

小学~中学生だった彼女たちが歌うのはディスコやファンク。若い女の子が歌うには渋い音楽ジャンルである。勿論デビュー時にはアイドルらしい歌をシングル曲として披露していたが、「ヒマワリと星屑」以降徐々にブラックミュージック濃厚な、言わば"アイドルらしからぬ"歌をシングルとして発表するようになる。B面曲に賑やかなポップソングを収録はしていたが、「クール」あるいは「ダーク」な、女の子にしては背伸びしている歌がA面を飾った。

 

 

 

ファンキーな女子"流"サウンド、ここにあり

 

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(皆さん若い! マイクスタンドで歌って踊るのも当時としては珍しかった。)

 

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「ヒマワリと星屑」がリリースされた当時、『Jackson SistersのI Believe In Miraclesを超えた!』などと評判が伝わり音楽ファンが注目したという"事件"もあった。

"もはやレアじゃない"レア・グルーヴとして有名な「~Miracles」。ファンキーかつキャッチ―。まさに"女子流サウンド"の原型の1つである。同年代の女の子が歌ったという点でも共通している…というか松井さんはこの曲を意識して編曲しているはずだ。

 

後の「W.M.A.D」「pain」などの収録順(イントロを除いて)2曲目はカッティングギター始まりが、女子流ちゃんのアルバムのお約束でもあった。

因みに、彼女たちはマイケルが所属していた「ジャクソン5」とは全く関係ない、ファミリーグループだ。ジャクソン5が登場したことで当時多くのレコード会社は次なる"天才キッズグループ"を発掘しデビューさせていた。そのブームに乗っかったけど上手く成功を収められなかった子供グループの足跡を残した1曲だ。

  

 

 

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(てってれ、てってれ♪)

 

女子流がブラックミュージックを意識している話で、さらにもう一曲。初々しくて見ている私も恥ずかしくなってくるライブ映像から、「ゆうやけハナビ」。

この間奏部分で可愛くスキャットするこのリフ(とぅっとぅる、とぅっとぅる♪)はJocelyn Brownの代表曲、「Somebody Else's Guy」を参考にして作られただろう。

作曲家・編曲家がアイドルに自分の好きな音楽を歌わせること自体私は大好きだし、でもそれを歌いやすいようにアレンジするのはさらに素晴らしいことだ。誰でも思わず口ずさめるこのリフレインは後の「それでいいじゃん」でも使われ、比較的明るい曲で効果的に使われている。

 

久保田利伸さんもラジオにて紹介し「聴いた人はイントロの『ガアアアィ!!』のシャウト部分を真似したくなる」と仰られていて、印象的だった。また、今年から本格的に活動拠点を海外に移したNao Yoshiokaさんもライブで披露している。こちらも素晴らしいカバーである。

 

 

 

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(折角だからこのDon't Be Cruelと一緒に彼女たちを覚えよう。ただし、あぁちゃんこと小西彩乃は脱退…そのニュースが飛び込んできたとき大分心折れた。無念…Bobbyの方と女子流のとでは詞の中で男女の立場が逆転、この構造が面白い。)

 

他にも、タイトルからしてモロBobby BrownなNJSナンバー「Don't Be Cruel」(エルビスの方ではないよ、冷たくしないで。)や、FugeesもカバーしたRoberta Flack曲から拝借したメロウチューン「Killing Me Softly」等々…まだまだ沢山出てくる。伝統ある黒人音楽を、女子"流"に換骨奪胎したというのが彼女たちの持ち味であった。

Brunoや源ちゃん、あるいはシティポップの流れよりも前に、先行してすでに東京女子流がトライしていた。かつて捨てたその流れを、女子流がまた挑戦し始めたのは何だか皮肉なことだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追記:

miyearnzzlabo.com

先日のグラミー2018、Bruno無双で盛り上がる中、日本メロウ巨匠=松尾潔さんがNao Yoshiokaさんと偶然出会った話を、NHKラジオ「メロ夜」で話してくださった。Anthony話でお互い打ち解けるなんて、粋だなぁ。